卒業制作展-2020年度

第1回 思いが伝わるポスターを作る デザイン部【前編】 

2021年2月9日(火)~14日(日)に開催される2020年度東北芸術工科大学映像学科 卒業/修了研究・制作展「24bit+」を創り上げる学生たちのリアルな言葉をお届けするため、広報部にて各部へのインタビューを企画しました。開催まで全5回にわたり毎週掲載していきます。
第1回では映像学科卒展ポスターのデザインを担当しているデザイン部の佐藤夏季さん、小野七菜華さん、村上千紘さん、樋口ゆり子さんの4名にお話を伺いました。
前編となる今回はラフの制作の段階から、複数のポスター案が出るまでの部分に焦点を当てていきます。


「24bit+」に込められた意味はどのようなものですか?

佐藤 映像学科が作品を作る上で、パソコン・スマホ・カメラなどの機械は必要不可欠です。機械の画面内は、色を持った正方形で構成され、目に見えています。そのデジタル画面上の色はフルカラー(ここでは24bitカラーを挙げます。)と呼ばれ、膨大に表現できます。しかし、膨大と言えども数が決まっているし、現実世界の方が色の境界は曖昧で、数え切れないほどの色数が存在しています。同じ色なんて無いかもしれないのです。
そんな、デジタル世界の中で収まりきらない色のように、私たち9期生の個性や作品も広がり、飛び出していく……そんな思いを、+(プラス)という記号に込め、このタイトルとなりました。

タイトルからポスターを制作するにあたり注目した点などありますか?

佐藤 プラスという記号に注目しました。24bitカラーの枠から「飛び出す・飛び出そうとしている・それ以上の何か」という意味を持っている記号だと思ったため、ポスターの枠の中だけで収まらないデザインを考えていこうと決めました。

小野 24bitというタイトルから色に着目し、どんな色が9期生らしくて、どんな色が映像学科らしいのかを考えながら制作しました。

村上 私は「個性が色数として表されている」ことに着目し、カラフルさが感じられるものにしたいと思いました。

樋口 フルカラーという意味合いのあるタイトルなので、色の扱い方に注目しました。また、+の部分から、「魅力がとびだす/殻をやぶく」といった解釈をしていきたいと思いました。

最初のポスター案の制作において苦労した点を教えてください。

樋口 タイトルが抽象的なので、具体的にしていく点に苦労しました。タイトルから連想される言葉をデザインのメンバーで意見出しをして行きました。

小野 タイトルが抽象的で難しい言葉だったため、伝えたいことや、タイトル、コンセプトをうまくビジュアル化することが難しかったです。

佐藤 展示のタイトル、テーマなどの文字情報しかない中で、デザインの方向性を決めていくことに苦労しました。私たち映像学科9期生を表現できる色彩、質感は何なのか?など……。まずはこれだけは違うと思う要素を挙げていきました。

村上 私はカラフルさを表現することに重点的になっていたので、タイトルは表現されているものの、肝心なコンセプトが表現されていないとフィードバックを受けました。そのため、タイトルとコンセプトの両方が伝わるデザインを作ることに苦労しました。

白黒、躍動感や立体感をテーマに選んだ理由を教えてください。また、デジタルを超えるものを表現するという苦労はどのようなものでしたか?

佐藤 9期生は個人で落ち着いて制作をおこなう人が多く、それが私たちだということを色で表現したかったためです。白黒をメインとし、その中にアクセントとなる色がある構成にしました。躍動感を表現しようとした理由は、ポスターを見た人が映像学科の展示だということが分かるように、静止画なのになぜか動いて見えると思えるものを意識して制作しました。
苦労したことは、ラフな線で描いたデザイン案だけでは、デジタル上から現実世界へのつながりを表現しにくく、ある程度描きこまなければいけなかったことです。(上図①②③担当)

色の特色を選ぶことに決めた理由を教えてください。また、それらを実際にポスターとして落とし込む上での苦労はどのようなものでしたか?

村上 テーマやコンセプトに「色の広がり=9期生の個性」という思いが込められていたので、色の特色が感じられるものにしたいと思いました。それをどう構成していけばコンセプトがデザインから伝わるのかを、試行錯誤していくことが難しかったです。(上図④⑤⑥担当)

1度目のポスターラフを出した段階での総括や感想はどのようなものでしたか?

小野 1度目の案はプロダクトやグラフィック学科に見えるというフィードバックをいただき、
展示を観に来てくださる一般の方が見て、映像学科の展示だと1発で判断できるデザインにしていこう!という意見を貰い、今のアイデアに至りました。

その後、第2案が出るまでの経緯はどのようなものでしたか?

樋口 展示する作品は、映画・写真・アニメ・CG・ドキュメンタリー、とバラエティに富んでいるのでどの表現形式でも当てはまるようなものにしたいという気持ちが強かったです。そこで、写真とイラストを組み合わせた表現という方向性が決まって行きました。
そして、テーマやコンセプトから、「ピクセルが飛び出す」「平面から立体への飛躍」といったアイデアが出て、立方体がしぶきから飛び出しているというイメージができました。また、立方体をプリズムのような色合いにすることで、24bitを表現しました。

第2案で多く取り入れられた液体表現に込めた思いや、液体を入れたポスター構成の苦労などはありましたか?またみなさんの制作した中での工夫点を教えてください。

小野 水を使うデザインになったのは、飛び出す溢れ出すというキーワード。そして動きがあるデザインだとより映像学科らしさが出るんじゃないかとアドバイスを受け、最初はペットボトルから水が吹き出すという案から始まりました。

樋口 飛び出しているようにしたいという想いから、しぶき(液体)が飛んでいるイメージが出ました。

村上 「飛び出す・溢れ出す」といったイメージから、液体からキューブが飛び出していると感じられるデザインにしました。デザインに「動きを取り入れること」をフィードバックとしていただいていたので、大胆に動きが感じられる強さがあるようなデザイン制作を行いました。

第2案を経て現在の案に至るまでにもさらに変化をすることになりますが、そのきっかけや流れについて教えてください。

佐藤 もっと動きのある素材が欲しくなり、本番用の水しぶきの撮影をしました。水面に落とす素材によってもしぶきの形が変わると考え、当日は立方体だけでなく、消しゴムやじゃがいもなども持っていきました。制御しにくい素材を使って良い写真が撮れたため、よく頑張ったと思います。
また、撮ったしぶきと立方体素材の切り抜きを担当したのですが、綺麗すぎても写真感が薄れるし、荒すぎてもデザイン的に綺麗ではないためその加減が大変でした。

小野 特に変更があったのは、飛び跳ねているキューブの部分です。実際に立方体を撮影しているので、その素材感を出すべきか、デジタルっぽい表現にするか、色のグラデーションの仕方、色相、明度なども何度も変更しました。最終的なグラデーションの色味を少しずつ変えたものを何個もつくり、メンバー全員がそれぞれ見て、お気に入りの一つを決めたのですが、全員が同じ一枚を選んでいたのがとても印象に残っています。

村上 フィードバックをいただき、「カラフルさがポイントで感じられるデザインの方がより良い」といった意見や「躍動感を出すためにキューブを浮かせる」といった案をいただきました。この頃にはデザインの方向性が固まってきたので、ポスターに使用する写真素材を撮影していただき、10案ほどのポスターデザイン案をデザイン部で制作しました。その中から再度意見をいただいて、現在のポスターデザインに至っています。
その後も「文字情報の詰め」や「キューブのグラデーションの見せ方」、「写真素材の切り抜き・ノイズ除去などの加工」など、細部を全員でブラッシュアップしていき、最終的なポスターデザインが出来上がりました。

樋口 立方体がいわば、学科生の個性なので、そこに視点がいくような構図や配色を選びました。文字の大きさや詰め方をブラッシュアップして行き、丁寧に作って行きたいと思います。


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