作品紹介,  卒業制作展-2020年度

卒業制作展 加藤ゼミ作品紹介

本年度の加藤ゼミからは卒業制作として6作品が出品されている。最終的な作品化の過程の中で、かなり悪戦苦闘してしまい、当初のテーマをそのまま表現するに至らなかった作品もあるが、それはそれで、本人にとってはかけがえのない貴重な制作体験であり、学生時代ならではの試行錯誤であったと言えるだろう。
 特に、藤田真衣の自死をテーマにした作品「ライト・ライフ・レコメンド」については、ゼミの中で早い時期から、様々な意見が林立し、活発な議論を生み出しゼミの活性化に大いに貢献してくれた。その後コロナ禍の中で有名芸能人の自死などのスキャンダルなニュースもあり、社会情勢と密着したゼミ運営につながったと自負している。この難しいテーマを描く手法として、手書きアニメーションを選択した点は独創的で評価したいポイントだ。正面から向き合ってしまうと中々結論にたどり着けない難解な問題を、視覚的に個人的な感情として表現することで、無理に背伸びしない素直なメッセージとして他者の共感につながっている。
 山下遼太の「O2Bombe」も、現代の若者の生きづらさをテーマとしようとした作品で、コロナ禍における取材制限がある中で、遠回りしながらも少しずつ問題のありかに近づこうともがき続け、結果的に若者世代の問題というより、自分個人の問題なのだと気づいていく過程を独白しながらつづっている。個人の成長と作品の成長が、作品完成に向けて同期していく様な若者らしい作品となった。
 その他の作品も現時点での偽らざる本音がしっかりと刻み込まれており、10年後、20年後に各自で見直してみた時、思いもかけなかったような貴重なメッセージに気づかせてくれるような大切な宝物に違いない。 

加藤到


『名辞以前〜窓辺の私〜』 畔上結衣
インスタレーション作品

「名辞以前」とは詩人・中原中也による造語である。言葉になる前の感情を意味するこの造語は、純粋無垢を愛する中也の心の表れであった。私達は作品化しようとする心によって純粋無垢を失い続けている。自己と他者の心によって幾重にも形を変え、元に戻ることは決してない。今作では、表現することによって失い続ける名辞以前を再現しようとした。


『違和の吐息』 庄司瑠菜
ドキュメンタリー作品 3分29秒

中学、高校、大学、そして現在とそれぞれの時間に感じていた疑問・違和感。それらを自分の言葉で表現しナレーションとして当て、実写の背景と重ねるように私自身を静止画で描いた。自分一人ではどうしようもできない、大きな流れに対する不安や不満。消化しきれなかった想いを形にした。

この作品は展示会場のみでの公開となります

『姿見パズル』 杉山晴菜
アニメーション作品 1分48秒

大学で様々な作品を目にしてきて、創作物は作者の一面を映す鏡の欠片のようだと感じた。そしてあまり作品制作に取り組んでこなかった自分は、姿見の前に立ったとき何も映らないのだろうなと思った。4年間の最後に自分を映し出すものを作ろうと考え制作に取り組んだ。

この作品は展示会場のみでの公開となります

『不要不急のお出かけ?』 豊嶋真空
ドキュメンタリー作品 7分7秒

一件不要不急に思える猫のお出かけも、彼らにとっては本能に基づいた必要至急の行為なのかもしれない。我が家の飼い猫に小型カメラを取り付け、その実態に迫る。


『ライト・ライフ・レコメンド』 藤田真衣
アニメーション作品 2分17秒

誰にとっても生と死は地続きであるものだと思います。風船を媒介としてその境界を視覚化してみました。あなたの周りの身近な生死について、あなたにもいつか必ず訪れるその時について、まずは気楽に考えてみませんか?


『O2Bombe』 chan
ドキュメンタリー作品 12分

同年代の人達は息苦しく、生きづらいと思っていた。でもそれは間違いで自分自身の問題なんだ。祖母に話を聞いた自分は海に叫んだ。

この作品は展示会場のみでの公開となります