作品紹介,  卒業制作展-2020年度

卒業制作展 中村ゼミ作品紹介

「日本映画の父」牧野省三の息子・マキノ雅弘は、18歳から映画を撮り始めて二十歳でキネマ旬報第一位となる名作を世に送り出した。林海象教授は「経験則なんてどうでもいい。映画は、若者の力を信じることからしかできない」と言う。本ゼミでは、これまでの慣習に囚われた、いわゆるプロを真似た「映画ごっこ」はしていない。ゼミ生たちの内的衝動によって生み出される映画、つまり新世紀の映画を目指している。
『ドーナツ・ホール』の尺は一時間余、フツーならばそれなりのスタッフ編成を要する規模だが、三人だけで作りあげた。ここにはフランス・ヌーベルヴァーグが映画を撮り始めたときのような「軽やかさ」がある。『爆弾ドラゴン 危機一発!』は、カンフー、アクション映画へのひたむきなオマージュが胸を熱くさせる。いつの時代にも「映画に対する愛」こそが私たち作り手の原動力なのだ。
『ぼくのらくがき』は、映画の中に2Dのアニメ「らくがきくん」が入り込んでくる。らくがきくんは主人公が初めて描いた漫画の登場人物でもあり「なぜ私たち作り手は創作するのか?」というメタファーとして、画面を縦横無尽に動き回る。『群青の赴きと共に、』は終始、観ていてワクワクさせてくれる映画だ。「こういう画を撮りたい、こんな表現をしたい!」。作り手ならば誰もが経験する、初めてキャメラを手にした時の興奮、楽しさが甦るからだろう。指導教員ゆえに、べっとりと甘いコメントになってしまったが、この四作品には、林教授の言う「新世紀の映画」の萌芽があると、私は思っている。

中村 高寛


『ぼくのらくがき』 阿部 晃大
映画作品 16分58秒

デッサンやイラスト、アニメと色んな方法で絵を描いてきたけど、結局落書きが一番好き。一番誇れるものがないけど、一番思い出がある絵だと思うんです。


『群青の赴きと共に、』 伊東輝実/難波佳希
映画作品 28分33秒

四年制大学を早々に中退し、サラリーマン歴三年目を迎えた主人公、遥(はるか)は、代わり映えのしない日々に無気力さを感じ、疑問を抱いていた。そんな中、故郷への出張の際、高校時代の元カノである晴香(さやか)と再会する。大きく印象が変わった晴香との予期せぬ再会によって、遥は自身の変化を促されるのだった。生きるとは変化すること。荒れた海原を前に、出航の時は自分で決めるしかない。


『ドーナツ・ホール』 川崎たろう/小山和生/五十嵐桃佳
映画作品 62分16秒

大学三年生の奈緒は心の中にある「埋まらない穴」に悩んでいた。それなりに楽しい生活を送っている方だと自覚しながらも、奈緒は周りの友達や生徒と関わりながら気付けば言葉に表すことのできない気持ちに頭を支配されていくのであった。「心の穴」をモチーフにした、人間誰もが抱える「埋まらない何か」について追求する劇映画。


『爆弾ドラゴン危機一発!』 佐藤且之
映画作品 27分

プロの殺し屋ドラゴンは、殺しの依頼主である大門によって爆弾人間にされてしまう。自分の身体をもとに戻すため、途中で出会ったヒーローに憧れる⻘年ヒイロと共に奮闘する… 映画といえばアクション!殴って蹴って大声出して銃ぶっ放して大爆発。大学生活は寝ても覚めても頭の中はアクションのことばかり。4 年間アクションを貫いた私の集大成です。